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立花 英久 展/Hidehisa Tachibana 塑像


2010.6.5 [sat.] – 6.13 [sun.]
サイハテ
ーレアリテと僕との間で③ー
ヒコーキ
飛行機を想像してみた。すると、またたく間にたくさんのヒコーキが、わたしの頭上に出現した。
彼らはすでに着陸態勢に入ろうとしていた。上空を旋回しながら列を作りはじめ、森をなぎ倒してまでも、彼らは強行するつもりなのだ。そう思うと、ほんとうにそうなってしまった。たくさんのヒコーキが、次から次へと着陸する。森は音もなくあっという間に開けて、サバンナみたいに草地を作ったのだ。
わたしの目の前には、いろんな種類のヒコーキが並んで止まっていた。一機から(それは銀色にかがやいたエアバスだ)、タラップを伝ってひとりの女の子が降りてきた。機体に反射する光りをかき分けるように、その子が力いっぱい手を振っているのが見えた。わたしは眩しくて目がくらむ。わたしに向かって駆け寄って来るのがわかる。「会いたかったあ」と彼女は息を弾
ませて、それも収まらぬうちに「セツコちゃん、知らないあいだにオトナになったんだね」と言った。赤いランドセルの脇にクリーム色のリコーダーが突き刺さっている。わたしは彼女のかわいらしい手を握ってあげる。するとカラダが熱くなる。こどもの手はあったかい。
わたしはつないだ手を何度も振りながら、突然気がついた。涙がついで出た、「いままでいったいどこいってたのよ!」と声を抑えることもできないまま、顔が紅潮するのがわかった。
その女の子は小学校のときの同級生だった。わたしのほうを見上げたまま、すこしかなしげな顔をして、だけど小さな手は必死にわたしの手を握りしめたままでいる。わたしを見上げる目にも、いつのまにか涙がたまって青白い空が映っている。こどもながらに、こぼれないようこらえているのだ。それを見たら、
「みっちゃんのことかんがえてたのよ、そしたら、」そこまで言ってわたしは声をつまらせた。それでも、「びっくりしたよ、ほんとに会えるだなんて」ひくひくして、わたしのほうがこどもみたいだ。わたしはうろたえていた。すると彼女は、まるでわたしの動揺が伝わったみたいに、だいじょうぶ、だいじょうぶ、とわたしを慰めるようにつないだ手を揺らした。みっちゃんとはなかよしだった。みっちゃんとはなかよしだった。みっちゃんとはなかよしだったのに、すぐには気づかなかったよ、みっちゃん。
みっちゃんはいつのまにか、もっと大きなヒコーキに乗り換えて、あっという間に、森の中のカッソーロから飛び立っていった。「オトナってどう?」そう聞かれて、わたしは答えることができなかったな。ほかのヒコーキも追随するように、彼らのすべては点々になって空の中に見えなくなってしまった。
わたしは気がついたら、風の止んだ、そびえ立つ森に立っていた。空はウソみたいに澄みわたっていた。遠くのほうで飛行機が光った。
それが、わたしがここに来てサイショのできごとだ。

立花英々「サイハテ」より抜粋
六耀社刊「球体1」所収

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